空冷ポルシェの価値が世界的に高騰する中で、ひときわ異彩を放つ存在がRWBです。千葉県柏市から始まったこのカスタムスタイルは、いまや海を越えて世界中のファンを熱狂させています。一方で、その過激な姿に対して否定的な意見を持つ人がいるのも事実です。
純正の状態を愛する愛好家からすれば、ボディに直接サンダーを入れる手法は到底受け入れられないのかもしれません。しかし、なぜRWBはこれほどまでに高値で取引され、多くの人を惹きつけるのでしょうか。調べてみると、単なる改造車の枠に収まらない独自の価値が見えてきました。
RWBポルシェがダサいと言われる理由は?
ネット上や愛好家の間で「RWBはダサい」という声が上がるのは、その独特な手法と見た目が原因のようです。名車とされるポルシェに手を加えることへの是非は、昔から繰り返されてきた議論といえます。なぜこれほどまでに意見が分かれるのか、その理由を探ってみました。
フェンダーを切る改造への強い抵抗感
空冷ポルシェは生産台数が限られており、保存状態の良い個体はもはや文化遺産のような扱いです。そこにサンダーで切り込みを入れる行為は、一部のファンにとって耐え難いショックを与えます。一度切ってしまったフェンダーは二度と元には戻せません。
純正至上主義の人たちからすれば、オリジナルを破壊する行為は価値を損なうものに映るようです。正直なところ、私も最初に作業風景を見たときは、その潔さに言葉を失いました。取り返しのつかない決断を強いるスタイルだからこそ、拒絶反応が出るのも当然といえます。
価値観は人それぞれですが、希少車への敬意が足りないと感じる層がいるのは避けられない事実です。切断という工程そのものが、美学の対立を生む最大の火種になっています。
派手すぎるウィングと過剰な車幅
RWBの特徴といえば、地面を這うような低さと巨大なウィング、そして大きく張り出したフェンダーです。この威圧感のある見た目が、上品なスポーツカーを求める層には「下品」や「子供っぽい」と映るケースがあります。純正の流麗なラインが消えてしまうからです。
カスタムカーイベントでは主役になれる存在感ですが、高級ホテルのエントランスでは浮いてしまうかもしれません。街中で見かけると、あまりの幅の広さに圧倒されると同時に、やりすぎ感を感じる瞬間もあります。見る人の美意識によって、評価が真っ二つに分かれるデザインです。
実際のところ、この過剰さこそがRWBの狙いでもあります。調和を捨てて個性を突き詰めた結果、一部の人には「ダサい」と切り捨てられるほどのインパクトが生まれています。
街乗りでの取り回しが悪く見える
機能性を重視するドライバーからは、極端に低い車高やワイドなタイヤが実用的でないと批判されがちです。段差一つ越えるのにも神経を使い、狭い日本の道路では走る場所を選ばざるを得ません。車としての使い勝手を犠牲にしている点が、ダサいと評される要因の一つです。
実用性を求めるならノーマルのままが一番なのは間違いありません。しかし、RWBは効率や利便性を追求する車ではないという点に気づきました。不便さを抱えてでも自分のスタイルを貫く姿勢は、万人受けはしませんが、一部の熱狂的な支持を生む理由でもあります。
走る場所が限られる不自由さを、オーナーたちはむしろ楽しんでいるようにさえ見えます。移動手段としての合理性を求める人には、到底理解できない領域の話です。
中井氏の感性をアートと捉える層の評価
批判的な声がある一方で、世界中のオーナーが中井啓氏の手腕を求めて列を作っています。彼の作業は計算機を使った設計ではなく、長年の経験と勘に基づいた感覚的なものです。フェンダーの隙間をミリ単位で調整する姿は、整備士というより彫刻家に近い印象を受けます。
この職人技に惚れ込んだ人たちにとって、RWBは移動手段ではなく「走る芸術品」です。世界に一台しかないという希少性が、否定的な意見を上回る価値を形成しています。意外なのは、若者だけでなく往年のポルシェファンの中にも、この世界観に魅了される人が少なくないことです。
工業製品としての完成度よりも、作り手の体温が伝わる一品ものとしての価値。その魅力に気づいた人にとっては、他人の評価など取るに足らないことなのかもしれません。
製作にかかる費用とコンプリートカーの相場
憧れのRWBを手に入れるには、車両代金だけでなく膨大なカスタム費用がかかります。中井氏本人が施工するという特殊な形式のため、単純なパーツ販売とは次元が異なる金額が必要です。実際にどの程度の予算を見込んでおくべきか、内訳を見ていきましょう。
キット代と塗装工賃で400万円から
RWBのボディキット自体の価格は、およそ2万5,000ドルから設定されています。ここに日本国内での輸送費や、ワイドフェンダーに合わせた全塗装の費用が加算されます。塗装費用だけで100万円を超えることも珍しくなく、外観を仕上げるだけで400万円以上は確実にかかります。
さらにホイールやサスペンションも専用品を用意する必要があり、足回りだけで150万円ほど上乗せされます。正直、この金額を聞いただけでも気が遠くなりますが、これはあくまでカスタムのみの費用です。完成までの道のりは長く、予算管理が非常に難しい趣味といえるでしょう。
見た目を整えるだけで、一般的な高級セダンが一台買えるほどの金額が飛んでいきます。これに内装やエンジンのオーバーホールを加えれば、費用は天井知らずに膨れ上がります。
ベース車両は1,500万円以上の個体が主流
RWBのベースになるのは、930や964、993といった空冷エンジンのポルシェです。これらのモデルは現在、世界的に価格が高騰しており、まともに走る個体なら1,500万円を下回ることは稀です。カスタム費用と合わせると、最低でも2,000万円以上の総額になります。
最近では程度の良いベース車を確保すること自体が困難になっています。ボロボロの個体を安く買って直す方法もありますが、修復費用を考えれば結局は高くつきます。現実的なところ、手元に2,500万円程度の余裕がなければ、スタートラインに立つことさえ難しい世界です。
ベース車両の確保が最大の難所。以前のように数百万円で空冷ポルシェが買えた時代は、もう過去のものになってしまいました。
中井氏を現地に招くための渡航費も必要
海外のオーナーがRWBを製作する場合、中井氏を現地へ呼ぶための渡航費や滞在費を負担します。彼は世界中を飛び回って作業するため、予約を取ること自体が数年待ちという状況です。この「中井氏が目の前で仕上げる」という体験そのものに、高い対価が支払われています。
日本国内であれば渡航費の負担は少なくて済みますが、待ち時間の長さは変わりません。お金を払えばすぐに手に入るという性質の車ではない点が、所有欲をさらに刺激するのかもしれません。手間と時間を惜しまない人だけが辿り着ける、非常に贅沢な遊びだと感じました。
費用の内訳を以下の表にまとめました。為替や個体差による変動が大きいため、あくまで最低ラインの目安です。
| 項目 | 費用の目安 | 備考 |
| ボディキット代 | 約400万円〜 | 2.5万ドル〜(為替で変動) |
| 全塗装・取付工賃 | 200万円〜 | 塗装の質やショップによる |
| ベース車両代 | 1,500万円〜 | 空冷ポルシェの相場に準ずる |
| 合計予算 | 2,100万円〜 | エンジン・内装費用は含まず |
中古市場での評価とリセールバリュー
RWB化されたポルシェは、中古市場でどのような扱いを受けるのでしょうか。一般的に改造車は査定が下がるものですが、RWBの場合は全く別の力学が働いています。世界的な需要と、日本国内での特殊な事情を調べてみました。
海外オークションでは3,000万円超えも
アメリカやヨーロッパのオークションサイトでは、RWBの完成車が驚くような高値で落札されています。過去には3,000万円を超える価格がついた例もあり、ベース車両の価格を大きく上回るリセールバリューを見せています。これは「作品」としての価値が認められている証拠です。
日本で生まれたカルチャーが海外で高く評価されているのは、同じ日本人として誇らしい気持ちにもなります。海外の富裕層コレクターにとって、RWBはステータスシンボルの一つになっているようです。投資対象としての側面も持ち始めており、価格が下がる気配は今のところありません。
改造車でありながら、純正品を超える価値を生む。この逆転現象こそが、RWBというブランドが持つ最大の不思議であり強みです。
「中井氏本人の製作」かどうかが価値を分ける
中古市場で最も重視されるのは、中井氏本人がそのフェンダーを切ったかどうかという事実です。世の中にはRWB風のコピーキットを装着した「偽物」も存在しますが、それらはリセール価値が著しく低くなります。本物であることを証明する公式のシリアルや記録が重要視されます。
彼の手が加わっていない個体は、単なる「切った貼ったの改造車」として扱われてしまいます。意外なのは、塗装のムラやわずかな傷があっても、中井氏のサインや製作時のエピソードがあれば価値が上がることです。所有者のこだわりが、そのまま車の価値に直結する世界といえます。
本物であるという証拠が、何千万円という価格差を生む。ブランドの根幹は、中井氏という人物そのものにあるといっても過言ではありません。
一般の買取店では事故車扱いの査定になる
海外での高評価とは対照的に、日本の一般的な中古車買取店では非常に厳しい査定を受けることになります。フェンダーを切断し、フレームの一部を加工しているため、法律上は「修復歴あり」の事故車扱いになるからです。純正の状態を基準にする店では、価値がゼロに近いと判断されるリスクもあります。
もし手放すことを考えるなら、RWBの価値を理解している専門店や、海外への販売ルートを持つ業者を選ぶ必要があります。普通の車と同じ感覚で査定に出すと、あまりの安さにショックを受けるかもしれません。売却先を間違えると、せっかくの資産価値をドブに捨てることになります。
国内の一般市場では不遇な扱いを受ける一方、熱狂的なファンの間では宝物として扱われる。この極端な二面性が、RWBという存在の特殊さを物語っています。
憧れのRWBを手に入れる3つの方法
実際にRWBのオーナーになるためには、いくつかのルートが存在します。しかし、どの道を選んでも相応の覚悟と忍耐が必要です。現在の状況を踏まえた、現実的な3つの方法を整理しました。
1. 製作予約を入れて順番待ちに並ぶ
最も王道なのは、自分のポルシェを千葉のファクトリーへ持ち込み、中井氏に製作を依頼する方法です。この方法なら、色や仕様を自分好みにオーダーでき、製作過程そのものを楽しむことができます。ただし、世界中からオーダーが殺到しているため、着工まで数年待つことは覚悟しなければなりません。
自分でベース車を探し、維持しながら順番を待つ時間は、ファンにとっては至福の時かもしれません。中井氏との打ち合わせを経て、世界に一台の相棒が出来上がる喜びは格別でしょう。正直なところ、このプロセスを経験してこそ真のRWBオーナーといえるのかもしれません。
時間はかかりますが、最も納得感のある方法です。自分だけの「名前」を中井氏につけてもらえる特権も、このルートならではの魅力です。
2. 国内の委託販売や専門店を定期的に巡る
すでに完成している個体を中古で購入する方法もあります。空冷ポルシェの専門店や、カスタムカーを得意とするショップに委託販売として並ぶことがあります。このルートの利点は、数年という待ち時間をスキップして、すぐに乗り出せる点にあります。
ただし、売りに出される個体は極めて少なく、情報が出た瞬間に売れてしまうことがほとんどです。ショップのスタッフと良好な関係を築き、入荷情報をいち早くキャッチできる体制を整えておく必要があります。中古であっても価格は据え置きか、むしろプレミアがついている場合が多いのが現実です。
即戦力として手に入れたいなら、この「待ち伏せ」作戦が有効です。ただし、前オーナーの好みが反映されているため、自分の理想と100%合致する個体に出会えるかは運次第です。
3. 海外の個人売買サイトから逆輸入する
日本に在庫がない場合、アメリカの「Bring a Trailer」などのオークションサイトで探すのも一つの手です。海外には日本よりも多くのRWBが流通しており、好みの個体を見つけやすい環境があります。円安の影響で割高にはなりますが、選択肢の広さは国内の比ではありません。
ただし、輸入の手続きや日本国内での車検適合化など、ハードルは非常に高いといえます。輸送費だけで100万円単位の費用がかかることも珍しくありません。実際のところ、個人で完結させるのは難しく、輸入代行に強い業者のサポートを受けるのが現実的な判断です。
海を越えて自分の元へ運ばれてくる体験は、ドラマチックですがリスクも伴います。現車確認が難しいため、詳細な写真やメンテナンス記録を徹底的にチェックする執筆力が必要です。
購入前に知っておくべき3つのデメリット
RWBポルシェは素晴らしいアートピースですが、所有するには現実的な苦労が伴います。夢を壊すような話かもしれませんが、購入後に「こんなはずではなかった」と後悔しないための注意点をまとめました。
1. 日本の車検に通すためのハードルが高い
RWBのワイドフェンダーは、そのままでは車検に通らないケースが多々あります。車幅の変更手続き(構造変更)が必要なのはもちろんですが、タイヤのはみ出しや最低地上高など、検査官の判断が厳しい項目が並びます。特に最近は法規制が厳しくなっており、以前よりもパスするのが難しくなっています。
車検のたびに車高を上げたり、タイヤを交換したりする手間をかけているオーナーも少なくありません。ショップ任せにすると、それだけで数十万円の費用が飛んでいくこともあります。実際のところ、日本の公道を堂々と走るためには、常に法律との知恵比べが必要なのが実情です。
かっこよさと引き換えに、車検という高い壁が立ちはだかります。この苦労を「儀式」として楽しめる余裕がなければ、所有し続けるのは難しいでしょう。
2. 狭い道や段差がある場所は走行不可能
RWBの全幅は、モデルによっては2メートルを超えます。これは一般的なスーパーカーよりも広く、日本の古いコインパーキングや狭い路地には物理的に入れないことを意味します。目的地に駐車場があるか、その道中に段差がないかを事前に調べる作業が欠かせません。
車高も極限まで下げられているため、コンビニの入り口にあるわずかな傾斜でフロントスポイラーを破損することもあります。どこへでも気軽に行ける車ではない点は、所有してみて初めて痛感する不便さです。意外なのは、高速道路の料金所やドライブスルーですら、車幅のせいで苦労する場面があることです。
走る場所を選ぶ不自由さは、日常使いを考える人には致命的な欠点になり得ます。あくまで晴れた日の「特別なドライブ」専用と割り切る必要があります。
3. オリジナルの状態には絶対に復元できない
何度もお伝えしている通り、フェンダーを切断しているため、ノーマルの姿に戻すことは不可能です。これが資産価値にどう影響するかは、将来の市場が決めることですが、後戻りできない怖さは常に付きまといます。ポルシェの歴史を自分の手で断ち切ったという事実は、消えません。
「一生持ち続ける」という決意があれば問題ありませんが、気が変わったときの選択肢は非常に狭まります。売却先も限られ、一般的な査定の枠組みからは外れた存在として生きることになります。正直なところ、この不可逆性を受け入れられるかどうかが、オーナーとしての最大の資質だと感じます。
一度踏み出せば、もう戻れない。この覚悟を持てる人だけが、RWBの持つ真の魅力に触れることができるのです。
RWBポルシェの主要スペックと特徴
RWBがどのような車なのか、その中身についても触れておきます。単なる見た目だけの改造車ではなく、空冷ポルシェの素性を活かした独自の作り込みがなされています。
930・964・993の3車種が製作の中心
RWBがターゲットにするのは、空冷エンジンの終焉を飾った3世代の911です。それぞれのモデルに合わせた専用のボディキットが用意されており、中井氏のこだわりが反映されています。特に964はベース車としてのバランスが良く、RWBの中でも最も人気のあるモデルとなっています。
930はクラシックな雰囲気が強く、993は空冷最後のアドバンテージを活かした走りが魅力です。どのモデルを選んでも、ワイドフェンダーを装着した瞬間にポルシェ本来のラインとは別の、獰猛な生き物のような姿に変貌します。ベース車両ごとの特徴を以下の表にまとめました。
| ベースモデル | 特徴 | RWB化した時の印象 |
| 930 (1975-1989) | トーションバーサスで個性的 | 最も「ワイルド」な旧車感 |
| 964 (1989-1993) | パワステ・エアコン完備で快適 | RWBの王道スタイル |
| 993 (1993-1998) | マルチリンクサスで高い走行性能 | 現代的で最も「速そう」な見た目 |
極太タイヤを履きこなすワイドトレッド
RWBの走りを支えるのは、圧倒的な太さのタイヤです。リアタイヤには300mmを超える幅のものが装着されることもあり、これが地面を掴む感覚はノーマルのポルシェとは別次元です。ワイドフェンダーはこの極太タイヤを収めるために存在しており、機能に基づいた造形といえます。
ただし、タイヤの選択肢が限られるという悩みも付いてきます。特注サイズのホイールが必要になり、タイヤ交換の費用だけでも一苦労です。実際のところ、これほど広いトレッドはサーキット走行においても独特な挙動を生みますが、その安定感に病みつきになるオーナーは多いようです。
見た目の迫力に負けない、物理的な接地感の強さ。これがRWBという車の「走り」の正体です。
仕上げの粗さが生む圧倒的な存在感
RWBを間近で見ると、驚くほど「手作り感」に溢れていることに気づきます。フェンダーの継ぎ目のシーラントや、リベットの打ち方など、現代の車のような均一な美しさとは無縁です。しかし、この「粗さ」こそが、中井氏が魂を込めて作ったという証であり、凄みを生んでいます。
綺麗なショールームで眺めるよりも、使い込まれたガレージやサーキットのパドックが似合う車です。傷や汚れさえもスタイルの一部として取り込む懐の深さが、他のカスタムブランドにはない魅力です。意外なのは、そのラフな仕上げが、かえってポルシェの持つタフなイメージを強調している点です。
精密機械としての美しさではなく、道具としての力強さ。その哲学に共感できるかどうかが、RWBを愛せるかの分かれ道になります。
まとめ:唯一無二のスタイルに価値を感じるか
RWBポルシェは、オリジナルの保存を重視する人からは敬遠されますが、唯一無二の存在感を求める層には代えがたい魅力を持っています。フェンダーを切り落とすという不退転の決意から生まれる姿は、中井氏という一人の職人の哲学が形になったものです。莫大な製作費用や維持の難しさはありますが、それを上回る所有の喜びがあるのは、世界中の熱狂的なオーナーが証明しています。
まずは自分がどのモデルをベースにしたいのか、中古市場での出物がないかを定期的に確認することをおすすめします。海外のオークションサイトでの落札事例を追うだけでも、適正な相場観を養うための大きな助けになります。


